020 最近のイラスト、線のはなし
今年1月中頃から1〜2日に1枚ペースでSNSにアップするのを続けてみた。一日坊主の僕にはめずらしく2ヶ月弱続いたので、記念に最近試していたことを書いておこうと思う。今回は線のはなし。
昨年のリソグラフ、とくにA4サイズに印刷したもので、面積に対して画が弱いなという反省があった。弱いというのは目に飛び込んでくる圧が弱いみたいなイメージ。今年はA3サイズやそれより大きいシルクスクリーンを考えているので、こういう懸念は払拭しておきたい。ただ、構図や色構成は弱いというよりむしろ硬すぎる感じもあり、テイストを変えすぎずに印象を強化できないものかと考えていたところ、unpisさんのDISCOVERという画集を見つけた。太くて伸びやかな線がガツンとくる作家さんだ。これまではあまり他人の作風を参考にしすぎないようにしていたのだけど、今回は素直なきもちで参考にさせていただいた。
昨年の作品では「ひとつの絵の中で線幅は一定」「線は二度引きせず一発で引き、テクスチャを出す」というルールで描いていたが、これが曖昧な弱さの要因だったように思う。このルールはラフスケッチのような柔らかさには合うけど、そもそも構成が硬いし、印刷サイズが大きくなるほど絵が保たなくなっていくので、限界を感じていた。これを「線幅は部分により適宜変更、太い線も積極的につかう」「線は一発描きせずしつこく整える」ルールにかえてみた。
実は当初、ラインがはっきりしているタイプの絵は苦手だった。このタイプの多くはIllustratorでベジェを引いて描くベクターイラストが主流という印象もあって、なんとなく別ジャンルのように考えていたのだけど、本を見るとunpisさん自身は一部の作品をアナログ画材で仕上げているらしい。インタビューではデジタルでラフを描いてからアナログに移行するメイキングが載っており、なんとなく親近感が湧く。
このベジェっぽいきれいな線をあえてフリーハンドで描くという工程、僕の作画はデジタルで完結しているけど、実際に描いてみると意外な効果があった。直線ツールなどで直線を引かず、フリーハンドで描くと線に微妙な反りや曲がりがでる。曲線はきれいに描くのがむずかしいので、線の太さがほんのすこしだけ不均一になる。線と線の交点の処理にも神経質になる。こういう細かいしつこさが誘発されることで、グラフィックというより絵としての強度が高まったと思うし、線がソリッドになったのに全体の印象は以前より柔らかくなったような気がする。もちろんunpisさんがそういう意図でやっているかは全くわからないけど、本から習って試すことでこんなにダイレクトな影響を受けたことがいままでなかったので、とても新鮮だった。
次回「印刷のはなし」へつづきます。
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